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2010年11月29日 (月)

道草をしながら

 父の家は歩いて十五分くらいのところにある。父は今は施設にいるので毎日行く必要は本当はないのだが、どこにも出かける必要がないと歩かなくなるので出かけることにしている。本当はもっと近い道もあるのだが、川に沿った道を歩くのが好きなので遠回りをすることになるがあえてこの十五分の道を歩いている。
 十五分というのは脇目も振らずに一心に歩けばということであって、実際にはカメラを持っている僕は途中何度も写真を撮るために立ち止まるので十五分で着くことはめったにない。よほど風が強かったり、寒い日であれば一心不乱に歩くかもしれないが、鳥の声が聞こえるとどこにいるか探し、カメラを構えている。翡翠がじっと枝に止まっていれば、翡翠が飛び立つまで僕も動けなくなる。青鷺が僕の気配に驚いて飛び立つ。暖かい日には蝶が花の蜜を吸っている。これから寒くなるが越冬する蝶もいる。鳥や蝶を見つけると、その度に立ち止まってカメラを向ける。そんなことをしていると少しぐらいの雨が降っていても、震えあがるほどの寒い日でも苦にならない。先を急ぐことはないので、飛び立った翡翠を追って今きた道を後戻りすることさえある。そうこうしていると気がつくと父の家に着いている。
 ある日、こんなふうなのが人生なのかとふと思った。出発点から目的地まで効率的に行く必要はない。効率的に生き、死ぬ必要はない。途上で道草をしながら、時には後戻りもしながら時を忘れて遊んでいたら気がついたらずいぶん遠いところまできていた。生きることも遊びである。

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日記」カテゴリの記事

コメント

講演、ありがとうございました。以前、勉強した事なのに忘れている事が多々ありました。「深刻にならず真剣に生きる」。ストライクでキャッチしていましたのに最近、忘れていました。
「慰めて、スッキリしても後には何も残らない」が心にグサリと来ました。 人から相談を受けた時、私がそうなっているんやないだろうかと・・・。
「出発地点から目的地まで効率的に行く必要は無い」。効率的に生き、死ぬ必要は無い。この話にもガッテンしました。面白かったです。
28日は短い時間でしたが、心に響くお話をありがとうございました。
あっ、そうだ。夕飯の献立を朝、考えなくて夕方でいいとおっしゃっていましたが、夕方では遅いと思うのですが・・・。買出しや時間が掛かるものもありますし・・。私は24時間、考えている感じがします。明日の献立だけや無く、明後日、三日後・・お弁当・・昼食・・。やはり、ずっと考えているなぁ。 最近、私はごはん係りの為に生まれてきたなぁとすら思います。

投稿: 赤坂 多恵子 | 2010年11月30日 (火) 09時54分

 予想どおり一番前にすわってくださったので、リラックスすることができました。講演はいつも緊張するのですが。ありがとうございました。
 僕もこの頃食事のことをよく考えています。今日は大学の講義の日で、講義後会議があって帰りが遅くなりました。やっぱり僕が作りしかないのだろうな、家族が先に帰っていたらどうしようと朝から考えていたように思います。僕も「ごはん係」。

投稿: 岸見一郎 | 2010年12月 1日 (水) 21時44分

「遊びをせんとや、うまれけん」ですね。
先日、自作魚眼レンズで撮影する昆虫作家の
写真集をみました。
カマキリやバッタが人間のような表情を見せるので
楽しくページをめくっていたら、
私の苦手な蝶や蛾のドアップや毛虫の大群まで出てきて、
思わず心の中でウギャー!と叫び(本屋さんだったので)
震えながら棚に戻し、
「それも含めて一冊なのね」と納得しました。
私も、私の好きな虫だけが載っていることを求めることが、
他人に効率を求めていることなのだとガッテンしました。

投稿: ちばちゃん | 2010年12月 4日 (土) 16時35分

 虫のマクロ写真を見ると、たしかに人と変わらない表情をしています。蛾の写真は撮りませんが、蝶も苦手なのですね。どうしてなのかなあ、といってみても理由はないでしょうね。

投稿: 岸見一郎 | 2010年12月 8日 (水) 22時03分

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