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2010年8月24日 (火)

私は死ねない、と

 父は初めて今自分がどこにいるか気にし始めた。父はマンションを借りて一人でここに住んでいる、というのだが。でも、一人で住んでるんだったら食事はどうしているの、とたずねたら、ここでは食事はしてない、着替えをしたこともない、という。なんかいろんなことがよくわからないのだという父と長く話をした。あの家はどうなっているとたずねるのは父が子どもの頃住んでいた家のことだった。よく覚えてるんだ、と家の間取りや近所の様子を詳細に話してくれる。亡くなった妹(僕のおば)の名前も話の中に出てきた。60年も前のことであることを指摘すると、昨日のようだという。その家を結婚して出てから後のことはまったく記憶に残っていない。帰るまでに短編小説を5回ほど繰り返し読み聞かせられたようだった。帰ろうとしたら、ふいに「お前は結婚しているのか」とたずねた。「どうしてそんなこと聞くの?」「結婚してなかったら、私は死ねないと思ってたんだ」一瞬、答えをためらった。僕に関しては父はまだ学生だと思っているようだ。
 目下、介護の本を書いている。父が帰って以来、父との関係を考えるためにたくさん本も読んだ。これだけ介護の本が出ているのになお何を書けるのかと考えたこともあったが、おそらくどの本にも書いてなことを書けると思う。終盤。完成を急ぎたい。

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コメント

お父様 一年でも、一月でも、一日でも長く生きていてください

投稿: 眞理子 | 2010年9月 9日 (木) 09時05分

眞理子さん
 ありがとうございます。僕も、長く生きてほしいと思います。

投稿: 岸見一郎 | 2010年9月19日 (日) 08時39分

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