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2010年5月 2日 (日)

同意してくれた

Glad to see you remain...

 朝行くと、ベッドから降りてすわっていた。どうやらポータブルトイレで用を済ましたものの立てなくなったようだ。痛みが刺激になったのか、驚くほど冴えていて、最近のこともあれこれ思い出して、いつまでもテンション高く話し続けるので驚く。仏壇があったはずだがどこにあるとか、友達に会いたいとか、看護師さんは7人きてるのだろうとか、インタビューを受けたんだって、とか…昨日の朝日新聞に載った僕の本の広告を見せたら「特殊な本だから売れんだろう」というのには苦笑。売れるから。
 一番の心配事は夜一人でいることだという父は「お前にここに住んでもらえないかと思っていた」といいだした。「それは無理なんだ、僕は家族がいるから」といってもこれはわからないようだった。
 今が老健入所のことを切り出す絶好のタイミングだと判断して、金曜日の入所の件を話したところ、すぐに同意してくれた。父は権威に弱いので主治医の名前を貸してもらったのだが。先生がお医者さんと看護師が常駐する施設を紹介してくれた。夜もずっと見回ってもらえる。病院ではないから昼間は絵を描いたりして自由に過ごせる…
「そうか、しばらく入院するんだな」
「そう」
「個室でないといやだな」
「それは心配しなくていい。個室だから。静かに過ごせるし」
「それはよかった」
 個室は前にも書いたことがあるが、高くつくので個室しか空いてないといわれ正直困ったのだが、この時ばかりは個室であるといえてよかったと思った。去年、入院していた時のことを思い出して、見舞いの人がくるとうるさくてかなわなかったという話をした。
 腰痛のために沈殿していた過去の記憶がかき回されたようであれこれ思い出したのはいいのだが、直近のことは覚えられなくなってしまった。夕食後、食べたかどうか二度もたずねたし、父を支えてベッドから居間まで移動したのに、ほんの少し、僕が別の部屋に行っている間に僕がきていることを忘れてしまった。「一郎が帰ってきたら、風呂に入ってもいいかきいてほしい」と妻に話している声が聞こえてきた。
 そこで、「帰ってきた」僕は父に風呂に入りたいんだって、とたずねると
「腰まで風呂につかってあたためたら痛みがましになるかと思って」
という。
「うちは風呂ないから」
「いや、あるはずだ。一階にあるだろう」
「でも階段が…」
「降りていったらいいだろう」
 僕はここで言葉を失ってしまったのだが、父とのここでの生活も後数日だと思うと心穏やかでいることができた。

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