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2009年6月23日 (火)

蚊帳に泣く

 ヘルパーさんに父を任せて用事を済ませるために一時間ほど出かけた。扇風機がかかっていたのでヘルパーさんに尋ねたら、掃除をしている間に父が自分でつけたそうだ。ヘルパーさんが帰られ、父は寝に行こうとしたが、その時、自分の方に向いていた扇風機を僕の方に向けてくれた。何でもないことのように思えるかもしれないが、父の病気はこんなふうに他者を気遣うことを難しくしていて、他者と共有する世界に生きて居ないように見えることがあっていつも心を痛めてきたので、これをもって病気の回復を意味しないことはいうまでもないが、少なくとも今日は(あるいは今は)父の調子がいいことがわかって驚いた。日に日にできなくなることが増えてくるが、症状の進行が緩やかであってほしい。
 司馬遼太郎の『坂の上の雲』に正岡子規が登場することを知って、読み始めたことは前に書いたが、秋山真之がアメリカに行った時に、次のような俳句を「日本」に載せた。
 君を送りて思ふことあり蚊帳に泣く
 病に倒れ、まだ三十なのに人生がすぼまる一方だと思った子規は、秋山のはなやかさと我が身を引き比べて、蚊帳に泣いたのだろう、その気持ちはわかるように思う。在外研究にドイツに行く友人のことを思った。僕にはチャンスはないし、病気は日本から出ることもおそらくは許さないだろう。

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