« 忘れていることは | トップページ | 馬を酔わせる »

2009年3月17日 (火)

縺れた糸

 この頃は疲れてしまって、昨夜は横になって今読んでいる堀江敏幸の『おぱらばん』(新潮文庫)を5行ほど読んだところで寝てしまったようだ。僕はこの作家のことを何も知らず、去年、大学に出講する時に、京都駅の新幹線の構内にある小さな本屋で偶然見かけて手にした。その時は疲れていて心が少しばかりすさんでいて少し読んだだけで長く記憶の底に沈んでいってしまったが、最近になって、『おぱらばん』を読み始めたらおもしろく、手に入る限りの作品を読んでしまいそうな勢いである。僕が知らないフランスの小説が引いてあって、読みやすくはないが、味わいながら少しずつ読み進むと、10年前に2日だけ行ったパリのことなどが懐かしく思い出される。
 父が昨日いった「忘れていることは思い出さなくてもいいのだ」という言葉のことを考えていた。過去を忘れることは怖いことだと思うのだが、今が満ち足りていれば、過去がどうだったかは関係がないということかもしれない。今が満ち足りているかはわからないが、こちらに戻ってきてからの日々を父が不安に思わず過ごしてくれているのならいいのに、と思った。時々、父と時間をかけて縺れた糸をほぐすたびに父は落ち着いてくるように思う。今日もこれができなくなったということばかり、退院後の最初の二週間は思っていたが、今週はあまり気にならなくなった。
 娘が昨夜遅くオーストラリアから帰ってきた。いつまでもテンションが高く話し続ける。帰省中の息子とも楽しそうに話していた。オーストラリアからも携帯電話で簡単に連絡がつくがそのことで先週はかえって心配の種が増えたように思っていた。父が入院中、病院からいつなんどき連絡があるかと電話を常に身につけていた時のようにである。VISAデビッドカードを使える店が少ないなどトラブルはあったが(エンボレスカードなので手動のインプリンターによるオフライン手続きができないなど)、大きな問題はなく帰ってこられてよかった。VISAデビッドカードは、通常のクレジットカードとは違って、入金してある額の範囲でしか買い物ができないので、紛失、盗難時は安心である。国内で一度もクレジットカードを使ったことがない娘には敷居が高かったようではある。

|

« 忘れていることは | トップページ | 馬を酔わせる »

日記」カテゴリの記事

コメント

>「忘れていることは思い出さなくてもいいのだ」という言葉

歳を重ねて生きてきた方が言う 重みのある言葉ですね。思わず「そうですね。」とつぶやきそうになりました。

混乱から少し落ち着かれた様子にほっとしています。
娘さんのテンションの高さが案外救いになったり…

春がもう目の前です。こちら九州。

投稿: あいまいモコ | 2009年3月17日 (火) 21時23分

 こちらは蝶が舞う暖かい日になりました。父との生活は日々驚きの連続ですが、父から教えられることも多くあります。
 父は独居しています。父にはまだ娘が帰ってきたことを伝えていなかったことを思い出しました。

投稿: 岸見一郎 | 2009年3月17日 (火) 22時19分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 忘れていることは | トップページ | 馬を酔わせる »