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2008年12月12日 (金)

冬の日射し

beauty catches the eye ...

 朝、行くと風呂に入っていた。昨日の約束と違うというと、忘れてた、と笑う。「よく寝られた。起きたら8時だったので」。11時にこられた看護師さんには「一人で〔風呂に〕入った、と息子に叱られましてね」と笑う。たしかに昨日よりは調子よく見えた。僕は叱ったりはしていないのだが。注意はする。「ごめん」と父は小さな声で謝る。
 過日、沢木耕太郎の『無名』を読んだ感想を書いたが、その中で印象に残っている箇所がある。ある日沢木が病院で一人で父親の看病をしていた。沢木は父と二人で映画を見たことを思い出した。その映画の前に上映されたニュースで、二人のボクサーがリングの上で追いかけっこをして場面を思い出した。あれはおかしなシーンだった。そう思って笑い出しそうになった時、眠っていると思っていた父親が不意にいった。
 「あれは面白かったなあ」
 寝ぼけているのかと思って聞き返した。
 「えっ?」
 「ほら」
 「何?」
 「グルグル逃げまわって……」
 二人は同じことを考えていたのだ。
 父と昼間いると、こんなことが起こってもそんなに不思議ではないと思ってみたりもする。
 暖かな冬の日射しの中で父が居眠りをしているのを見ていると、いつまでもこの平穏な幸福が続きますように、と思う。

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コメント

私も実家の母と一緒の時、同じなのだと思う事がいっぱいあります。遠く離れていても、どうしているかな?と思って電話をすると、「今電話しようと思っていた。」と言うのです。目には見えない強い絆で結ばれている事を、いつも感じます。

投稿: おりひめ | 2008年12月13日 (土) 11時16分

 「♪手~のひらを~たいように~♪」の歌詞が浮かびました。綿毛が暖かな太陽に向かって手のひらを伸ばしているようです。楽しそうに。

投稿: フィン・カ・ビヒア | 2008年12月14日 (日) 21時39分

おりひめさん
 いつも思い続けていたら、いわれるようなことはたしかにありますね。偶然というにはあまりに不思議なことはこの世にあるのかもしれないと思う瞬間です。

投稿: 岸見一郎 | 2008年12月15日 (月) 21時03分

フィン・カ・ビヒアさん
 傾き始めた日の光を逆光でとらえてみようと思いました。いつも父と散歩する道で撮りました。

投稿: 岸見一郎 | 2008年12月15日 (月) 21時05分

 あっ!ほんとうですね。
 逆光なのに、スポットライトが当たっているみたいです。不思議ですね。

投稿: フィン・カ・ビヒア | 2008年12月15日 (月) 22時44分

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