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2008年11月10日 (月)

自分を好きになる

自分を好きになる
 子どもたちは今はまだ大人からの援助が必要ですが、やがて自立し、この人生で直面する課題を自分の力で解決できるようにならなければなりません。とはいえ、何もかも自力では解決できない時もあるでしょう。そんな時のために、子どもが大人に援助を依頼できるよう親子関係をよくしておきたいのです。
 これまでのところでは、子どもは大人と対等であること、そうであるならば、子どもを叱ることもほめることも本来できないということ、そこで命令しないでお願いし、丁寧に話して「ありがとう」といおうと提案しました。今回は、そのようなことが、子どもの自立、即ち、自分の人生の課題を自力で解決できるようになるために、なぜ必要なのかを考えてみましょう。
 まず、子どもに自分のことを好きになってほしいのです。この自分は他の道具とは違って買い換えることはできませんから、これからもずっとつきあっていくことになります。それなのに、自分を好きになれなければ、幸福になることはできません。では、どんな時に自分のことを好きと思えるかといえば、短所だと思えるような性格でも実は長所であると性格を見直すことも大切なことですが、自分が他者に貢献していると感じられる時であるということを見逃すわけにはいきません。子どもは「ありがとう」といわれれば、自分が他の人の役に立っていると感じることができるのです。
 子どもができる貢献は、最初は些細なことかもしれません。それでも自分が他の人の役に立てると少しでも思えれば、このことは、子どもがやがて直面する人生の課題を解決できるという自信につながっていきます。
 ところで、子どもが他の人に役立とうと思えるためには、その他の人がアドラーが使う言葉でいえば「仲間」、つまり味方であり、必要があれば援助してくれる友人だと思う必要があります。そうでなければ他の人に役に立とうとはそもそも思わないでしょう。それなのに親が子どもを叱ると、親子関係は確実に遠くなり悪くなりますし、親を代表とする大人全般が自分の仲間ではなく「敵」だというふうに子どもが思ってしまうと、子どもはそのような敵である他の人に役立とうとは思わないでしょう。そして、自分が役立っていると感じられなければ、自分のことを好きにはなれないのです。
 子どもに貢献感を持ってほしいもう一つの理由は、他の人からただ受けるだけではなく、自分も他の人に与える人になってほしいからです。子どもはたしかにまわりの大人から援助を受け、実際、知識、経験ともにまだ十分持っているとはいえない子どもにとっては援助を受けることは必要なことです。しかし、人が自分を援助するのはあくまでも好意であって、当然のことではありませんし義務でもありません。子どももまた、このわれわれが生きている共同体の一員として他の人に貢献する人になってほしいのです。そして、そのことを苦痛ではなく、喜びに感じてほしいのです。
 子どもをそのあるがままに受け入れるということは間違いではありませんが、子どもの視点からいえば、何もしなくてもいいわけではありません。与えられるだけはなく、自分も与えられる子どもになってほしいのです。

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アドラー心理学」カテゴリの記事

コメント

初めまして。素敵なお写真と、岸見先生の静かな心に沁み入るお言葉を、毎日楽しみにしております。

3ヶ月ほど前、小学生の娘が学校で仲間外れになり、それをきっかけに自分の子育てを見直した結果、偶然にもアドラー心理学に出会いました。

怒ってばかりの子育てから、叱らない・感情的にならない・向き合って話をよく聴く・・・これらを実践していくうち、娘が変わったのを実感しております。(強くなり、私に心を開いてくれるようになったと・・・)

クラスでの状況は、担任の配慮などで多少良くはなったものの、相変わらず意地悪はあり、娘はそれを軽く流したり自分なりに色々対処しているようです。
直面する課題を、自分の力で解決するよう頑張っているようです。

そんな娘を、逞しく思う反面、親としてはやっぱり心配で、毎日嫌な思いをしているかと思うと可哀そうになってしまいます。
心配し過ぎて苦しくなる自分の気持ちに困ってます・・・
心配してはいけない、子供の気持ちを辛いと決めつけてはいけない・・・と、思いながらも、日々ここから抜け出せずにいます。
(岸見先生のお言葉には、いつも大変勇気づけられております。)
はじめてのコメントでこんな長文、失礼しました。

投稿: みか | 2008年11月11日 (火) 11時07分

みかさん
 コメントありがとうございます。
 心配してはいけないわけではありません。でも、それは親が解決しなければならない課題で、子どもに解決してもらうわけにはいかないのです。何かできることがあったらいってね、とはいえますが実際にはできることは少ないかもしれません。何か援助の依頼があって、それが可能なことであれば力になってください。
 子どもさん自身が自分で自分の課題を解決できると信じることは今重要なことだと思います。

投稿: 岸見一郎 | 2008年11月11日 (火) 11時30分

早速のお返事、ありがとうございます。
娘に、
「何かお手伝いしてほしいことがあったら言ってね。」
と言いますが、いつも
「大丈夫、自分でなんとかするから。」
という答えが返ってきます。
娘が自分で自分の課題を解決しようと頑張っているとすごく感じています。
私も、自分の課題を自分で解決しなくてはいけませんね・・・

投稿: みか | 2008年11月11日 (火) 11時50分

 今は静観しましょう。家で娘さんと一緒の時にいい関係でいることが今みかさんができることだと思います。

投稿: 岸見一郎 | 2008年11月11日 (火) 19時29分

わかりました。
静観する自信がなかったのですが、岸見先生にはっきりそう言ってもらい、静観する勇気が沸きました。
そして、家では更に『感情的にならない』『怒らない』『向き合って話をよく聴く』を実践し、娘に仲間と思ってもらえるよう、頑張ります!

今日、思いきってこちらでご相談してみて本当に良かったです。
ずっと私の胸にあったモヤモヤが吹き飛んだ気がします。
ありがとうございました。

投稿: みか | 2008年11月11日 (火) 23時33分

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