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2008年10月10日 (金)

断想1

【potpourriというファイルがハードディスクの中にあるのを見つけました。いつかまとめるつもりで書き散らしたもののようです。続くかどうかわかりませんが「断想」という名前をつけて連載してみます】

 ある日、Essence of Romanceという大貫妙子のコンサートに行く機会がああった。「年下の人にとって人生のカッコイイ先輩」でありたいという大貫妙子は、舞台に登場した瞬間から聴衆の心を捉えた。
 歌を作る時は、自分の中にあるたくさんの引出しや、過去の自分の体験を参照すると語っていた大貫は、「突然の贈りもの」を歌った後、感極まって泣いてしまった。「少し待って。もうすぐ復活するから」という大貫を皆が待った。やがてこんな話をした。
「若い時は相手に期待してしまうけど、やがてそんなことをしなくなって…」

 不満を言わずに解決に向けて努力する。ミルトン・エリクソンがいっている。私の話が聞こえにくいという人に限って後ろのほうにすわる、と。前の方にすわればいい。

 ミルトン・エリクソンがこんなことをいっている。「私は、人は生まれたその日が死に始める日だと、心に留め置くべきだと思っています。少数の人は、死ぬことにそれほど多くの時間を費やさず人生を有効に生きているのに比べて、多くの人は死ぬことを長々とまっています」(『私の声はあなたとともに』)。エリクソンの言葉は必ずしも死に目を向けないで生きることを勧めているわけではないだろう。むしろ、死は誰も避けられぬことであり、そのことを知った上でなお、死が怖れや不安を引き起こすべきではない、人生は生きるためのものであることをいおうとしているのであろう。カウンセリングの帰り際にある人が唐突に「生きるのは苦しいですね」といわれたことがあった。生きることはたしかに苦しい。しかし、それでも、人生を楽しみたい。

 48歳で亡くなった哲学者の三木清が、悲しみを見つめた者には心の落ち着きがある、と書いている(『幼き者の為に』)。

 高校生の頃から大学院に入る頃まで毎日日記ばかり書いていた。膨大なノートが残っている。1976年9月29日付けの日記に福永武彦の小説から言葉を引いている。自己成就予言?
「凡庸な活気のない、半ば眠った生に就くよりは、明日の日に死ぬとも神秘と空想と情熱の中にこそ身を委ねるべきなのだ。夢のない生は死に等しい」(福永武彦『塔』)

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エッセイ」カテゴリの記事

コメント

>>不満を言わずに解決に向けて努力する。ミルトン・エリクソンがいっている。私の話が聞こえにくいという人に限って後ろのほうにすわる、と。前の方にすわればいい。

 何度となく子供のことで悩んでいる人が相談している場面で他の人が「それは子供さんにきいて見てはどうですか?」と助言したのを見かけるのですが、そのたび、ほんとだ。それもそうだわ~と、目からウロコ!になるのですが、このエリクソンが言っている事も、こうやって聞けばあたりまえで、なんでそんな簡単なことをおもいつかないのだろう・・・と思います。それでも、いざやろうとすると簡単なことでもできない(やりたくない)と思うことがあるから、人間っておもしろいものなんだな~とこの頃思います。

投稿: mari | 2008年10月10日 (金) 20時16分

 実行するのは簡単なのに、そうしてはいけないわけを山ほど創り出すということはありますね。助言したことをいつから始めるか、カウンセリングで約束してもらうことがあります。今晩からですか、明日からですか、三日後ですか、一週間後ですか、というふうに。

投稿: 岸見一郎 | 2008年10月10日 (金) 21時01分

一週間後から・・・とどうせやるのなら、明日から・・・とすればいいのに、と思わなくもないですが、これがいざ自分のこととなるとなかなかできないのだろうな、と思います。中一の息子が今学年中に受けるように奨励されている予防接種があって、それを中一になる直前にプリントをもらってきて、そのうちに、そのうちに・・・・と延ばし延ばしして、まだの人は・・・とプリントをもらうたびに大騒ぎしています。どうせやるなら、さっさとやってしまえば、延期している間の想像上の痛みなど軽減されるのに、と思います。でも、自分のこととなると感心するくらいやりたくない理由と言うのはいくらでもそれなりのものが作り出されます。もしこういう言い訳や欺瞞の思考がなく、たったかたったか課題に立ち向かっていけば、どうなるのでしょうね。

投稿: mari | 2008年10月11日 (土) 14時17分

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