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2008年9月 2日 (火)

子どもを尊敬する

 子どもは大人の目から見れば経験がなく、端で見ていてはらはらすることがあります。そこで親は子どもが行動を是正することを願って、つい口出しをしてしまいます。例えば、子どもがいつまでもテレビの前を離れようとしなければ「勉強しなさい」といいたくなります。こんな場合、子ども自身も自分が今していることの意味を知っていると思うのです。親が不用意に声をかけ、子どもが今から勉強しようと思っていたのにやる気がなくなったというようなことをいうとすれば、この仮定は正しいことがわかります。もしも自分のしていることの意味を知らなかったのであれば、素直に「はい」といったでしょうから。子どもは親がいうことが正論であればあるほど、親のいうとおりにしたくありません。親に負けたと思うからです。こんなことで結果的に子どもが勉強しないでおこうと決心するようなことがあれば、子どものためにはなりません。子どもを援助してはいけないわけではありません。子どもの方も親からの援助を必要とすることもあります。しかし子どもを適切に援助できるためには、子どもが親の助言を気持ちよく受けいられるような関係を普段からつくっておく必要があります。どうすれば、いい親子関係を築けるかについていくつかのポイントをあげて考えてみましょう。
 他ならぬこの自分を見てほしい、と大人も子どもも思わないでしょうか。他の人でもよかったのだと思うことは、辛いことです。親の注意は、ともすれば、きょうだいの中の勉強ができるなど目立った子どもの方に向いてしまいますが、注目されない子どもが、親は自分ではない他のきょうだいを大切にしていると思うと、積極的な子どもであれば、問題行動をすることで親の注目を引こうとするかもしれませんし、消極的な子どもであれば、生きることに絶望してしまうことになります。
 たとえあからさまに他の子どもと比べなくても、親は子どもについてこうあってほしいという理想を持ってしまいます。そして、この理想から現実の子どもを引き算してしまいます。子どもにしてみれば、この場合も、親が自分を見ていないと思うでしょうし、どんなに頑張っても、親の期待を満たすことができないことになります。もちろん、子どもは親の期待を満たすために生きているわけではありませんし、親に認められようといつも思うことは、それはそれとして問題です。しかし、親が自分のありのままを認めてくれると思えることは、子どもに大きな安心を与えます。子どもたちに必要なのは「生きる勇気」です。子どもは自分の力で解決しなければならない問題に取り組んでいかなければなりません。親とて子どもの人生を代わりに生きることはできませんが、子どもが生きる勇気を持つ援助をすることはできるのです。
 このように理想ではなく、ありのままの子どもを見るためには、問題があろうが、自分の理想とは違おうが、この子は私のかけがえのない大事な人であると思ってつきあっていこうという覚悟がいります。今は一緒に生きていても、子どもはやがて必ず親から離れていきます。子どもと諍いをしている暇はないのです。ありのままの子どもを認め、子どもが、親のためでなく自分のために成長していくことを願うことを、アドラー心理学では「尊敬」といっています。
(『ぷろぽ』2007年5月号)

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アドラー心理学」カテゴリの記事

コメント

今さっきの事ですが、4歳の長女が寝る時に私は「今日もありがとう」と声をかけました(いつも赤ちゃんと遊んでくれるので)。
2歳の長男には毎日困ってしまうことが多いのですが、寝る前に同じように「ありがとう」と言ってみました。すると優しい声で「かあか(私の事です)、ありがとう」と言って寝付きました。
本当にかけがえのない大事な人だなと思いました。

明日起きたら、また格闘していることでしょうが・・・。

投稿: そらまめ | 2008年9月 3日 (水) 22時23分

そらまめさん
 明日のことは明日考えましょう。すてきなやりとりがあったことを教えてくださって嬉しいです。

投稿: 岸見一郎 | 2008年9月 3日 (水) 22時33分

そうですね。今が大事なのに、明日の心配をしてしまいます

投稿: そらまめ | 2008年9月 3日 (水) 23時04分

 明日もきっといいことがあります。息子が小さかった頃のことを思い出します。朝、保育園に行くところから始まってなかなか大変な日々でしたが、いつか病気で力なく寝ているのを見た時、いつもの”やんちゃ”な時がいいと思ったことも。

投稿: 岸見一郎 | 2008年9月 3日 (水) 23時20分

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