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2008年9月 6日 (土)

新しい時代

むのたけじ『戦争絶滅へ、人間復活へ―93歳・ジャーナリストの発言』 (岩波新書 新赤版 1140)

 この本はインタビューをまとめたものである(聞き手、黒岩比佐子)。むのの名前は、前から知っていたのに、これまで一度もむのの本を読んだことがなかった。
 大半は題名からも知られるように政治批判だが、最終章の「絶望のなかに希望はある」では、これまで想像しなかったような若者が出てきたことを知り、このことを知ってから死ぬのと知らずに死ぬとでは大違いだ、最後はにこにこ笑いながら死ねるなあ、と思った、といっていることが印象的である。
 まず、今の若者は、門地、門閥、家柄、見識、権威にとらわれず、人間としてぶつかってくるということ。さらに、現実的で(普通は、夢がないというふうにいわれる)、とにかくなんとかなるさという根拠のない楽天論が通用しないということ(天皇の軍隊だから決して負けない、など通用しない)。第三に、友達を大事にすることを指摘している。
 もっとも、むのと話をした中学生はこんなことをいっている。
 「私は生まれてからずっと、大人に会うと上の立場から、下に見られていました。家では親から子どもだと見られ、学校では先生から生徒だと見られ、近所でも子どもだと見られていました。それがむのさんのところに行ったら、私を一人の人間として対等に扱ってくれたので、夢中でしゃべることができました。生まれて初めて子ども扱いされずに、人間扱いされました」
 ここからわかるのは、子どもたちが大人を警戒し、不信感を持っているということである。だからこそ、同級生、同じ年頃の友達を頼るしかない。それなのに、同級生らにいじめられたら、絶望しないわけにいかない。
 また、小学生が、外国の子どもを受容することに、むのは驚いている。むのが小学生の時、ロシア革命の後、日本に逃れてきたロシア人に「ロスケ」とはやし立て、雪玉をぶつけたりしたことを恥ずかしいと思った、といっている。
 むのがこういう話もあると語っている話も紹介する。小学生一年生は夏休みが終わる頃には、のみこみの早い子どもとそうでない子どもの差が出てくる。その時、のみこみの早い子どもがこんなことをいった。
 「先生、僕はわかったので、友達を手伝ってもいいですか」
 小学校教師のむのの娘さんは、こう答えた。
 「みんなも今一生懸命に考えているから、答えを教えずに力を添えられるなら、やってごらんなさい」
 むのは、相手に対する優越感からではなく、仲間として支えたいという気持ちを子どもが持っていることに驚いている。
 むのは、このような子どもに期待しているが、子どもたちの成長を待てないほど、事態は逼迫している。今、何ができるのか。

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